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Sunday, 06 November 2011

思い込みの怖さ

Bkbkm田馬場は都内でも屈指のラーメン激戦区である。人気店が数多く軒を連ねて、続々と新しい店がオープンしているが、同様に閉店していく店も同じくらい多い。それは右も左も分からない経験の浅い店だけではなく、全国に何十軒も店を構えているような実力チェーン店も同様で、半年や一年経たずして暖簾をたたむ店も少なく無い。しかしその理由は決して競合するラーメン店が多いから、というだけではない。あの街は非常に客層が絞りにくく、捉えにくい街なのだ。

高田馬場は学生街なのか

 高田馬場はどんな街かと聞かれれば、大半の人は「学生街」と答えるに違いない。確かに街には学生があふれ、早稲田大学などの大学生はもちろんのこと、予備校も多いので浪人生や高校生たちも多い。しかし実際にはオフィスも同様に多く、一本道を入れば住宅街が広がる、学生、会社員、商店、住宅が複雑に絡み合う場所なのである。そしてそれは高田馬場に限らず、ほとんどの街がそうと言ってもいい。学生しかいない学生街はないし、サラリーマンしかいないオフィス街もあり得ない。未来の乗り物はトゥモローランドにしかなく、夢と魔法はファンタジーランドにしかないというような、ディズニーランドの中のカテゴライズとは違うのだ。

 また同様に、その街の北と南、東と西でまったく性格が異なることも多い。線路や主要道路を隔ててガラッと街の顔が変わる。例えば、高田馬場、と言っても駅の東と西で違うし、早稲田通りの南北、明治通り以東でもまた違う。それをまとめて「高田馬場はこういう街だ」と語ることは非常にナンセンスであるし、経営者的な視点による戦略的思考とは言い難い。

金持ちの学生、大食いのOL、デザート好きのお父さん

 飲食店が客層を絞る時、どの店もその街がどんな性格なのかを考える。学生街なのかオフィス街なのか住宅街なのか。そこから学生・サラリーマン・OL・肉体労働者・主婦などをイメージする。しかし意外と盲点になっているのは同業の飲食店を始めとする商店の従業員の存在だったりする。オフィス街だから1時を過ぎたら皆お昼を食べに来なくなる。それは正解だけれど、それはサラリーマンの話であって、その人たちが食べに行った飲食店や、商店のスタッフたちはその後にお昼ごはんを食べる。すべてがすべて飲食店が自分の店で賄いを食べるとは限らないし、商店も一段落するのは昼休み後。実際ラーメン店の従業員で、同業他店に調査半分で食べに行ったりするケースは多々みられたりもする。彼らが食べられる時間も昼のピークタイム以降だ。そのタイミングで中休みを取っている飲食店はみすみす売上げの機会を逃している。

 あとは、学生・サラリーマン・OL…というステレオタイプなカテゴライズも結構危険だ。学生は金が無くて大食いとか、OLは小食でデザート好きとかの思い込み。もちろん貧乏学生もいるだろうし、普通の量でも残してしまうようなOLもいるだろうが、押し並べて学生はサラリーマンよりも自由な金をいっぱい持っているし、OLだって二郎マシマシを喰う人が多い。トッピングに悩み、お得なセットはどれだなどと考えているのはサラリーマン。これまでに色々ななラーメン店をプロデュースしてきて、メニュー開発もやってその購買傾向を見て来たが、ラーメン全部乗せにチャーシューごはんで1,200円なんてのを迷わず注文するのは学生だけ。サラリーマンのお父さんたちはとてもそこの金銭感覚はシビア。自分のことだけ考えていればいい学生とは背負ってるものがまったく違うのだ。

 またラーメン店に限って言えば、デザートの注文率はサラリーマンが高い。OL、女子学生、主婦などは色々な場所でデザートを食べられるけど、サラリーマンはなかなか食べるチャンスがない。女性はラーメン屋の片手間デザートに300円払うよりも、ちゃんとしたカフェで500円のケーキを食べる。その属性によって金銭感覚というのはまったく異なる。それをどう見切るかも飲食店経営では重要なことだ。

淡麗系ラーメンに対する幻想

 思い込みといえば、年輩客が油分が少なく和出汁が効いたあっさり味のラーメンを好むというのもそう。年輩の人がラーメン店に来るのは「ラーメンが食べたいから」。ある方がある店で「オレはラーメンが喰いたいんだよ。こんなのだったら蕎麦屋で喰えるだろ」と言ったのが今も頭を離れない。銀座の老舗「共楽」はどちらかといえば年輩率が高いノスタルジックラーメンの店だけど、あっさりでもさっぱりでもなんでもない。旨味は強く油分は多いし醤油ダレも強くてインパクト十分。同じ銀座の老舗でも「萬福」とは対照的だ。

 清湯系や淡麗系のラーメンがここ数年のトレンドというのは間違いではないけれど、ではそれが売れている、客の支持を集めているのかと聞かれれば、もう明らかに幻想以外の何モノでもなく、まさに思い込みの極致だったりするのだ。誤解のないように言えば、淡麗系の新店はここ数年増えているし、どこの店も美味しいし、行列も作っている。しかしマーケット全体を俯瞰した時にはその系統はやはりマイノリティだ、ということ。消費者が10人いて、7人や8人がそういう店を選ぶかといったらそうではないということ。先日発売になったあるラーメン本に掲載されていた読者ランキング。どういうサンプルでどう作られたデータなのか、その信憑性はさておき、結果を見るとベストテンのうちほとんどが濃厚豚骨魚介系のつけ麺だったり豚骨だったりで、あっさり清湯系などは皆無というのがその一つの証左であろうかとも思う。

いつの時代も売れるラーメンは「濃厚」

 ラーメンがブームになってからのこの20年、常に売れ続けているのはやっぱり「濃厚」「こってり」「豚骨」「豚骨魚介」味なのだ。今、この瞬間に全国のラーメン店で食べられているラーメンの数を数えたら、「今流行」の淡麗系や透明な塩ラーメンの占める割合はたかが知れている。よく、千葉の内房エリアは竹岡式をはじめとする醤油ラーメンの支持が強いという話があるがそれもある意味間違いで、市原、木更津、君津などを見てもそれよりも味噌ラーメンの方が売れていると体感する。これは良く言う話なのだけど、竹岡式ラーメンの元祖「梅乃家」がもし味噌ラーメンを出したら、きっと一番人気のメニューになるだろう。面白い実例を一つ挙げれば、今年木更津にオープンした超大型新店は、あっさり淡麗系の醤油ラーメンと、濃厚豚骨魚介系のつけ麺の二枚看板が売り。我々ラーメン評論家はもちろん、世のラーメンフリークもテレビ雑誌もこぞってこの店では濃厚なつけ麺よりもあっさりのラーメンを持ち上げるけど、お店の人に聞くと地元ではラーメンよりもつけ麺の出数が圧倒的なのだそうだ。これも非常に興味深いデータだと思う。

 ラーメン店を営む人や開業しようとする人は、マスコミや僕ら評論家の言う「トレンド」を真に受けてはいけない。僕らは皆が意識しないところを注目するのが仕事であり非常に視野狭窄的だ。トレンドのラーメンダイニングが1日100杯売る横で、ラーメンショップが500杯売ってるのが現実。しかし、テレビや雑誌などを眺めていると、世の中で売れているのはあっさり系のラーメンなのではないかと思い込む。言うまでもなく、その土地立地に即した味や店作りになっているかどうかがまず重要。マスコミやネット上での「作られたトレンド」ではなく、半径500メートル、1キロ圏内での傾向を探ることから始めるべきだ。そのために、自分の店の周辺の性格や客層を思い込みや先入観を取り払っていくことがとても重要だ。

(この文章はtwitterに連続投稿したものを加筆修正したものです)

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Thursday, 05 May 2011

僕が激安焼肉店に行かない理由

Yakiniku肉店「焼肉酒家えびす」における集団食中毒事件。まずはお亡くなりになられた方に心から哀悼の意を表しますと共に、今後このような痛ましい事件、事故が起こらないことを心より願っています。

 現段階で分かっていることは、富山や福井、神奈川など上記チェーン各店において、死亡した方たちを含めて被害者が感染したのはいずれも「病原性大腸菌O111」であるということ。またその遺伝子型が同一であるということ。原因菌及び遺伝子型が同じということは、同じ牛であるか、そうでなければ同じ施設で同じ器具などを使って処理しているとしか考えられないわけで、そうなると店舗や運営会社の衛生管理基準やオペレーションに問題があるにしても、この会社のセントラルキッチンもしくは肉卸業者における一次加工の段階に問題があると推察出来ます。

 この会社は高品質でありながらも価格が激安である焼肉店として急激に業績を伸ばしていく過程で、2009年より安い食材を求めて今回の肉卸業者に変更したのだと言います。店舗展開が急ピッチになる時には、オペレーションの見直しや業者の変更が行われることは常ですが、その結果衛生管理体制が甘くなったり、ダメな業者に変わってしまったのかも知れません。もし肉卸業者からセントラルキッチンに納品されてそこで加工されているならば、そのキッチンと肉卸業者のどちらかに問題があるでしょうし、肉卸業者で一次加工がされて直接各店舗に納品されているのであれば、卸業者の責任がまず問われそうです。いずれにせよこれだけ同時に複数の場所で、かつ子供だけではなく大人まで多くの方が被害にあっているということは、そのいずれかに相当な瑕疵、欠陥があったと考えて良いでしょう。

 今回の事件は論点がいくつかあるので整理が必要です。まずは「生食用牛肉の衛生基準問題」について。新聞はじめマスコミ各社が「生食用を使わなかった」と一斉に報じましたが、飲食業界の立場からすれば「今さら何を言ってるの」というのが正直な感想でしょう。フーズ・フォーラス社の勘坂康弘社長の会見と、その後の報道で明らかにされたように、現状として国の衛生基準を満たす「生食用」の牛肉の国内出荷の実績はほとんどありません。これは今明るみになったことではなく、以前から食の業界に携わる人間ならば誰もが知っていることですし、一般消費者に向けても行政はアナウンスしてきています。例えば都の福祉保険局が配布しているリーフレットにも、「市販されている肉の大部分は加熱調理用」であることや「肉を生や半生の状態で食べることは避け、中の色が完全に変わるまで充分に加熱する(加熱目安:中心部温度75℃で1分以上)という指針がしっかりと書かれています。

 つまり「全ての焼肉店で出されている生肉は生食用ではない」「生で肉を食べるのは食中毒のリスクがある」ということは、今回の事件以前から分かっていたことなのです。焼肉店での「ユッケ」などは、加熱用の牛肉を各店独自の衛生基準に基づき安全対策をした上で生食で提供しているのです。要するに生食用肉の衛生基準問題については、消費者のニーズや市場の現状と著しく乖離している、あるいは衛生基準に現状が合致していないということになります。なので「生食用を使わなかった」とこの会社を責めるのは間違いと言って良いでしょう。

 しかし、すべての焼肉店が同じルールに乗っ取って営業しているにも関わらず、これまでこのような問題が同時多発した例はあまり見当たらない。となると今回の食中毒の原因はどこにあるかと言えば、やはりこの会社独自の衛生管理基準やオペレーションの問題か、肉卸業者にあると言えそうです。前述したフーズ・フォーラス社社長の会見の論点も、まさに今述べた2点に集約されています。つまり「生食用ではない肉を使ったことを責められるならば、国の衛生管理基準が間違っているのですべてのユッケを販売禁止すべき」「今回の問題は生食用の肉を使わなかったことではなく、当社もしくは肉卸業者の衛生管理自体に問題があることを認めお詫びする」という内容でした。

 この社長の会見の論旨や論点そのものはまったく間違っておらず、文字だけを見れば至極真っ当なことを言っているのですが、実際に映像でその様子を見るとまったく印象が異なります。やはり生というか映像の持つ力は凄いですね。ああいう会見には向かないオーバーリアクションと喋り方。そして半ばキレ気味で話をして最後は捨て台詞を吐いて席を立っていく。上記のような業界の背景において、生食用を使わなかったと責められるのは筋違いというのは正論ですし、そこについて文句を言われて腹が立つのも分かる。しかし原因がどこかという以前に、自分の店で死者を4名も出している、そのことについての謝罪会見であるということがまったく分かっていない。

 不謹慎かも知れませんが、会社として最悪の状況において、彼の立ち回り一つでもしかしたら会社の信用が若干は戻ったかも知れないですし、被害者感情も若干は救われたかもしれない。しかしあの会見でさらに信用は堕ち、被害者の神経を逆撫でしてしまいました。食の安全を遵守しなければならない責任があり、従業員の生活を守らなければならない立場。それなのに冷静さに欠き、それらの責任や立場を忘れているかのような会見でした。状況判断能力と危機管理能力の足りない経営者と言って良いでしょう。

 動画投稿サイトにアップされた映像でこの店の調理手順を見ましたが、これはちょっと問題ですね。これでよく今まで事故を起こさずにやって来たものです。この店の厨房には肉を扱うプロや、しっかりと教育を受けた人がいないことがわかります。僕が知っている焼肉店などは、この店よりも衛生基準のレベルが高かったり、オペレーションがしっかりしていたり、経験や調理技術に長けている人が厨房にいます。ただ、手順はさておき厨房自体は清潔で整理整頓されていましたし、それなりに衛生的であったこの店でこのような事故が起きたということは、他の店でも起こらないとは言い切れないようにも感じます。

 やはりまず焼肉一皿100円などという価格設定の店にはどこかで無理があると思うのです。物には適正価格というものがあって、それ以下で出されているものには何かしらの理由があるはず。もちろん「企業努力」によって価格を押さえている例も多々あるでしょうが、その企業努力=コスト削減が果たして大量仕入れによるものなのか、人件費削減なのか、安い材料や粗悪な卸業者を選んだものなのか。色々な「努力」があるわけですからそれを見極める注意が必要だと思うのです。「安かろう悪かろう」という言葉がありますが、100円均一の文房具が壊れたとか、ハンカチの色落ちがしたなんてのは笑えますが、命に繋がる食の安全性についてはもっと敏感にならなければいけません。

 かつては「安かろう悪かろう」だから避ける、という感覚がありましたが、長い不景気によって最近は安さ最優先の意識が広がってしまって「安いのだから質が悪くても仕方ない」という感覚が蔓延っています。200円台のお弁当や丼もの、ラーメンなどが売られている今の世の中ですが、この「安さ最優先主義」は食に関しては非常に危険です。よりその影響を受けやすい子供達に食べさせる食べ物であればなおのこと。

 私たち消費者は食べ物についての知識をもっと持たなければならないと思います。今回被害を受けたうち子供が何人もいましたが、弱者である子供が被害に逢うのは当然であると思うと同時にちょっと驚いた部分もありました。これは誤解があってはとても困るのですが、食べた側にはまったく罪はなく、すべてはこの店が責められるべきという大前提に立った上で敢えて言わせて頂くならば、なぜこの親は子供にユッケなどを食べさせているのかなと。僕だったら子供にユッケは絶対に食べさせないし、レバ刺しや鶏刺しも絶対に食べさせません。それは激安店だからではなく、超高級店だとしても同じことです。なぜならそもそも「肉の生食」にはカンピロバクターだとかO157のような食中毒の原因菌を摂取する可能性が多分にあるからです。現に15年程以上前、牛のレバ刺しによって多くの食中毒を出したことから、現在の厚労省の衛生基準が設けられたわけですし。

 僕が子供の頃には、ユッケやレバ刺しなどの肉の生食はもちろん食べさせられませんでしたし、特に豚肉については病原菌や寄生虫などがいるからしっかり加熱するように教育が徹底されていました。鯖なども当たりやすい魚として注意するように言われましたね。なので今でもユッケやレバ刺しを食べる時には多少の緊張感を持っていますし、しゃぶしゃぶなどでも牛より豚は徹底的に湯がくのが習慣づいています。あとは鮭なんかもアニサキスなどの寄生虫がいるのでルイベで食べるのが基本ですし、秋刀魚や鯖なども同じく寄生虫がいる魚ですので、刺身は避けるのが普通でしょう(ちなみに酢で締めても寄生虫は死なないそうですが)。生牡蠣をはじめ貝類の生での全食もかなり食中毒の危険度が高いので注意が必要です。

 従ってこれらの物を生で食べる時には、まず信用のおける店や食材を選ぶということと、自分自身の体調もしっかり見ておかなければならないし、特に抵抗が弱い子供やお年寄りに対しては慎重にすべきなのです。これらのことは一般常識だと思っていたのですが、この一連の騒ぎを見るとどうやらそこらへんの常識や知識を知らない方も多くなっているようです。これは牛乳やホウレンソウの放射能で死に至る可能性よりも遥かに危険な事態だと思います。

 そして、そのように危険度の高い生肉の摂取をして食中毒になる場合、高級店よりも激安店で起こるのも可能性としては非常に高いですし、大人ではなく子供に多く発症するのも確率的には当然なわけです。だから僕ならこういう店にはまず行かないし、仮に行ったとしても生肉は食べないし、仮に食べたとしても子供には食べさせない。今回の事件の場合、原因の一つに安全のため食材の肉の表面を削ぎ落とす「トリミング」という工程を省略していたと報道されています。削ぎ落とすということはそれだけ捨てる肉が増えるということで歩留まりが減るわけで、それは無駄であるしもったいない、という発想になるのは間違ったコスト削減の考え方なわけですが、激安店の命題は「とにかく安く」なわけですから、そういうことになるのは当然とも言えます。飲食店における正しいコスト管理、コスト削減のルールとしては、まず食の安全性とそれを守るための衛生面が担保されているかどうかが第一です。というよりもそこが全てなのかも知れません。

 もちろん全ての飲食店、料理で衛生面は徹底して頂かなければ困りますが、提供する料理の内容によって基準やレベルに違いがあります。乱暴な言い方をすれば、ラーメン店や中華料理店なんてのはそこらへんの認識が若干甘くても、使用する食材の大半が加工物であったり、ほとんどすべての物が加熱して出されている為、食中毒を起こす確率としては焼肉店などに比べたら遥かに低い。もちろん生肉を切った包丁やまな板でネギなどを切るなんてのは問題ですが、注意しなければならないチェックポイントが少ない、つまり危険性が低いと言えます。

 しかし生の素材をメインで扱う飲食店、例えば焼肉店や和食店、イタリアンなどの場合は、同じ基準でやられると非常に危険なわけです。だから僕は決して気取っているわけではなく、こういうジャンルの激安店には原則として行きませんし、行った場合も生肉や非加熱の料理は極力避けます。ナショナルチェーンのファミレスや居酒屋、回転寿司などはかなり精査されて、衛生管理面が非常に厳しくなっている業界なので安心は出来るとは思いますが、やはりそもそも「当たりやすい食材」ってものはどこがどう扱おうが当たる時は当たるわけですから、どんな店であっても極力それを避けるというのが賢明でしょう。命を懸けてまで食べるべきものなど世の中には一つもありません。

 僕がこういう店に行かないもう一つの理由。それは焼肉や寿司などは良質のものを食べたいと思うからです。食べ物にも「ハレ」と「ケ」ってあると思うのですよね。僕の感覚としては「焼肉」も「寿司」も「ハレ」の食べ物。牛丼とか立ち食い蕎麦、ラーメンのように、毎日とか毎週食べるものではなく、何か特別な時に食べる食べ物。そんな滅多に食べないスペシャルな食べ物だからこそ、激安店なんかではなく良いものを美味しく食べたいと思うのです。せっかく焼肉を食べに行くなら、激安店に2回行くところを我慢して適正価格の焼肉店に1回行く方が、遥かに満足度も高く美味しく楽しめると思うのですが。ハレの外食に求められるものは、ある種の「非日常」であり「特別感」。ドキドキワクワクする楽しさや緊張感など。素晴らしい技術、料理、接客、空間など。激安店にそれを感じることは残念ながらありません。

 何でもいいから取り敢えず腹一杯喰えればいい、という価値観を否定はしませんが、その価値観に焼肉や寿司という料理は当てはまらないと思うのです。ましてや子連れなら食育や躾の観点からも、もっと良質の店に連れていくべきではないかなと。しっかりとした接客や美味しい料理を子供の頃に経験しておくことは、人格形成においてとても大事なことです。また、コストを考えるならば、近所の肉屋さんに行っていい肉を買って、家で焼肉をやった方がよほど安くて量も食べられて美味しく楽しい食事になります。寿司だったら手巻き寿司なんてのも楽しいですよね。焼肉や寿司にはCP最優先の発想は合いません。そこでお金がかかると言うなら家で食べた方がCPも良いし楽しくなると思います。なので、何をどうひっくり返しても激安焼肉店に行く理由が僕には見つからないのです。

 今回の事件を受けて思ったことを、とりとめもなくtwitterでつぶやいたのですが、今回それを加筆修正した上でまとめてみました。まとめたはずが余計まとまらず、5000文字を超える文章量になってしまい反省しております。まとまらないついでに更なる追記をするならば、この問題は家庭の台所でも起きる可能性があるということを忘れてはいけません。包丁、まな板などを生肉と野菜でしっかり分けたり、きちんと消毒などをしているかどうか。菌などが死滅するまでの加熱を徹底しているかなど、チェックポイントは多々あります。そしてそういう情報もちゃんと厚生労働省から指針が出されています。どうかご家庭でもこの点についてあらためてご確認頂きたいと思います。

 あらためて思うに、国の衛生基準の問題、店の衛生管理方法、食べる側の知識など、今回の事件から考えるべき問題は非常に多いです。今回の経験を活かしてすべてのことが改善されて、今後このような痛ましい事件が起きないことを切に願います。(写真は本文とは一切関係ありません)

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Thursday, 23 September 2010

チャーシューのネット販売は是か非か

Chashu近はお店に行かなくてもインターネットの通販で様々な物が買える時代になりました。僕はお店で現物を見て買う行為そのものが好きなので、実際にお店へ足を運んでみたり、なかったら何軒も探してみたりなんてことを楽しんでいますが、それでもなかなか手に入らないものや現物を見なくても分かっているようなものについてはネットで購入することが多いです。

 そんな中、ここ最近ラーメン屋さんのネット通販が顕著に売上げを伸ばしています。カップ麺や食品メーカーが作ったお土産ラーメンではなく、お店の厨房で作ったそのままの味を宅配するシステム。長い行列に並ばなくともお店の味が楽しめるとあって大人気です。そんな中、時々お店のチャーシューを販売しているラーメン屋さんがあります。自慢のチャーシューを1本丸々!といって、ラーメンに乗せるだけではなく、おかずの一品として、あるいはお酒のおつまみとして人気を呼んでいるようです。しかし、どうも僕が思うにほとんどのお店の場合ルール違反ではないかと思う部分があるのです。以下は僕が実際に調べたり直接聞いた範囲での話ですので、実際にはそうではないケースもあるかも知れません。あくまでも山路の私見である、その前提でご覧下さいませ。

 チャーシューというのはご存知の通り、豚肉を煮たり焼いたりして味付けして作るものです。これは食品衛生法上「食肉製品」というカテゴリに分類され、チャーシューを作ってチャーシューとして販売するには「食肉製品製造業」にあたり、当然製造販売には許可が必要になります。そして食肉製品製造業の免許取得は、厨房設備をはじめ成分規格なども厳密で、僕の感覚的には普通のラーメン屋さんで取得するのはかなりハードルが高く現実的に不可能ではないかと思うのです。というのは、僕がコンサルティングしているいくつかのお店でチャーシューのネット販売を計画した時に学んだことなのですが、厚労省や地域管轄保健所とやりとりしていく中で、販売は厳しいという結論に達したのですね。きっちり食品衛生法のルールに乗っ取ってチャーシューをネットなどで販売しようとすると、普通のラーメン屋さんの厨房ではまず無理なようなのです。

 細かい部分は割愛しますが、一つ例を挙げれば1つのお店で2業種以上の許可を取得する場合、原則として業種ごとに専用の部屋が必要だったりするのです。また汚染作業と非汚染作業について作業区域も明確にしなければなりませんし、冷凍冷蔵の設備もしっかりやらないといけない。そうやって厨房設備を作ろうとすると増築したり衛生面をクリアにしたりと偉いことになります。とあるお店の厨房は相当立派で大きなものでしたが、保険所的にはNGという答えが返って来ました。なので、普通のラーメン屋さんで普段作っているチャーシューを売るというのはどうやら厳しいと言えそうです。

 この問題について「惣菜扱いなので大丈夫」という見解が一部あるようですが、少なくとも僕が聞いた保健所ではチャーシューは「食肉=ハム、ソーセージ、ベーコンその他これらに類するもの」にあたるとの立場でしたし、仮にもしチャーシューが惣菜扱いなら対面販売しない限りは「そうざい製造業」としての資格が必要です。ちょっと話は逸れますが自家製麺のお店で生麺を販売するのも「めん類製造業」の許可が必要になるようです。同一食品でも営業形態の違い、売り方によって許可業種が異なることが多いのですね。そのあたりは酒税法における「酒類の販売業免許」にちょっと似ていますね。お店で飲む分を売るには問題ありませんが、テイクアウトを売るには免許が必要なのと一緒というか。

 ネット販売ではなく、店頭でチャーシューを売ったりする場合はどうなのか。これは色々な解釈がありますが、先ほどの「そうざい製造業」の話にも出て来たように、製造された場所での対面販売であれば「飲食店営業」の許可だけでOKということになりそうです。実は仕出し屋さんや弁当店って許可は「飲食店営業」なのだそうです。つまりその場所で作られたものをその場所で売っている分にはOK。お店で食べさせているものをテイクアウトさせている、という解釈になるのならば大丈夫なわけです。ですから、本店と支店があったとして本店で仕込んだチャーシューを支店で売るのはアウト。あるいはどこかの物販店に卸したりするのもアウト。ですから当然、インターネットの通販となればこれもアウト、ということです。

 それでもネットショップで出店しているラーメン屋さんでは普通にチャーシューを販売しています。上記のような背景を知っていて売っているとすればそれはそれで酷い話ですし、逆にそういうことを調べていなかったり、まったく知らずに売っていたとしてもそれは飲食業を営む資格がないと考えます。またそれを売らせているネットショップですが、ネットショップは飲食のみならず扱っている品目も多いですし、その部分は当然のことながら出店者任せになっているようです。確かにネットショップをテナントの大家だと考えればそこまで責任は持てないでしょうが、サイトの作り方ばかり指導するのではなく、そういうコンプライアンスの部分もアドバイスすべきだと思うのですが。

 ちなみに僕が聞いた保健所の見解では、ネットで販売する場合、自家製のチャーシューは単体でなくても、ラーメンの具として同梱して販売することもダメだそうです。麺とスープがあって、そこにチャーシューを別添の袋とかでつけてもダメ、ということ。そのチャーシューが食肉製造業の免許を取った加工業者に外注している場合はもちろんOKですが、それをクリアしていない自分の店の厨房で作ったものならばアウトということになると思います。

 そうなると、おそらく大半の人が最近流行の「有名店のストレートスープによる通販ラーメン」を思い浮かべると思います。そこにも自家製チャーシューが入っていますが、その場合もNGなのでしょうか?実はこの場合は合法でまったく問題がありません。なぜこの場合OKなのか。この場合、チャーシューはスープの袋の中に入っています。チャーシューは「スープの一部」として認識されますので食肉製品とは見なされなくなるのだそうです。そんなもん同じじゃないか、と思われる人もいるかも知れませんが、それがルールというか保健所の解釈なのです。余談ですが、この手の通販ラーメンを扱う最大手の担当の方とお話をしたことがありますが、無論常時保健所の方とやりとりをされて指導を仰いでいるそうですし、出品されているラーメン店の方に対しても衛生面での留意点について呼びかけたり、時には勉強会を開くこともあるそうです。食品を扱う以上当然の姿勢といえばそうですが、さすがだなぁと思いました。

 ただこの問題には一つ別の視点があります。そもそも上記のような通販ラーメン自体が「そうざい」に当たるという解釈です。某人気ラーメン店では保健所からそのような指摘を受け、専用の厨房を作り「そうざい製造業」の許可を取ったのだそうです。これに関しても自治体や保健所の裁量、場合によっては担当の人の判断如何の部分があるので何とも言えませんが、なかなか興味深い指摘ではあります。

 僕が実際に保健所に聞いたり通販に取り組んだお店の方とやりとりした中での結論は上述の通りですが、実際の運用などは保健所や担当の方の解釈や裁量によるようですので、チャーシューを販売しているお店で保健所からお墨付きを貰っているお店ももしかしたらあるのかも知れません。しかしここで大事なのは食物を扱う仕事をしている以上、まずはしっかりと調べて怪しい部分があるならば担当の保健所とやりとりをしてお墨付きを貰う努力が必要ということ。それが飲食をビジネスにする人の常識というかモラルではないかと思うのですが、ことラーメン屋さんにおいてはコンプライアンス意識が低い人がとても多いのです。僕がこういう話をすると「え、そうなんですか!」なんて驚いている。常識的に考えてまず食品を売る場合に食品衛生法とかと照らし合わせるでしょうに。

 以前、某大手ネットサイトでチャーシューを売っているお店があって、そこのご主人を知っていたのでこの話をしたことがあります。問題あるかも知れないから、保健所に相談するなりして調べた方がいいよと。その時にはやはり問題があるので販売をやめるようなことを言っていましたが、今でも普通に売っています。以前はチャーシュー単体で売っていたのを、今はラーメンなどとセットで売るようにしたようですが、ルールを拡大解釈しているのかどうかは分かりませんが、少なくとも僕の調べた限りにおいてはルール的に問題があるのは前述の通りです。

 きっと大半のお店の方はそのことを知らないし、知っている方はバレなきゃいいだろう?と、お伺いは立てず、通らばリーチ的なやったもん勝ち的な姿勢で売ってるお店がほとんどかと思います。しかし法を守るということは法に守られるということでもあるのです。もし万が一販売したチャーシューで食中毒などのトラブルが出た場合どうなるか。もし保健所の指導下に置かれた環境で、免許を得た上で製造販売していればまだダメージは少なく済みますが、ルール違反した環境下で食中毒でも起こそうものならもう申し開きが出来ないわけで。そういう想像力に欠けるというか、リスクマネージメント意識が足りない人がビジネスを、特に飲食ビジネスをやってはいかんと思うのです。

 誤解のないように書けば、お店のチャーシューを販売することそのものがいけないとか、不衛生であるとか、そういう話ではもちろんありません。食品衛生法という決められたルールに照らし合わせてビジネスをしているのかどうか、という一点のみの話です。個人的にはそのルールの方に無理があるよなぁと思いますし、保健所とかはお役所仕事ですから非現実的なことを平気で言います。でもそれは現実的じゃない、と言って無視して好き勝手やったらどこかの国と一緒です。現状のルールがそうである以上それを遵守しなければなりません。

 あらためて、飲食業を営む人には高いコンプライアンス意識が求められます。電話の出方が酷いとか名刺の渡し方を知らないなんて笑い話とは違い、これについてはマストというか最低限のスキルではないかと思います。(2011.12に一部加筆修正しました)

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