宮原学 The Double Clash! ~the 25th Anniversary★prologue~ release party@Shibuya O-WEST
宮原学さんというアーティストがいます。デビューは1986年。当時REBECCAなどが在籍した、CBSソニー傘下のレーベル「FITZBEAT」から「THE-FIGHT」という曲で鳴り物入りでデビューした、若き19歳のシンガーソングライター。その当時僕は18歳、高校3年生でしたが、正直その頃は名前くらいしか知りませんでした。世はバンドブーム。僕自身も自分のオリジナル曲を書いてはバンド活動をしていましたので、他人の曲を聴くよりも自分たちの曲を演ることの方が楽しかったのかもしれません。
その後、大学に入って音楽サークルで僕は宮原学の存在を明確に意識することになります。同じサークルにいた友人が宮原さんのことが好きで、宮原学のコピーバンドを演りたいと言うのです。大学の音楽サークルというのはそういう人がいれば、周りの友人が手伝うみたいな形でぽんぽんとバンドが結成されていました。僕もとりあえず楽器が色々弾けるという器用貧乏なところがあったので、やれボーカルだベースだキーボードだと色んなバンドを掛け持ちしていました。そこで宮原学コピーバンドを結成することになって、彼が選んだコピー曲の入ったカセットを渡されたのです(カセット?うん、カセットですね。懐かしい)。
僕の記憶が確かならそのテープで初めて聴いた宮原学の曲は「FOUR-ROUND BOY」という曲でした。ギターのリフから始まるオープニング、そしてそこにリズム隊が畳み掛けるように乗っかってくるイントロダクション。そしてドンと入ってくる骨太のボーカル。へたにコードをいじくり回さずに、ほぼワンコードで引っ張るAメロ。サビで再びオープニングのリフが重なってより高まるドライブ感。これは凄いぞ。
そこから彼の楽曲を貪るように聴く自分がいました。当時の最新アルバムであった名盤「SCRAMBLE」を磨り減るように聴きました。その中に収録されている名曲「WITHOUT YOU」「SHE SAID」などはそのコピーバンドでもレパートリーに入れました。そしてそこから遡ってデビューアルバムまで聴きこみ、そのバンドのメンバー皆で中野サンプラザのコンサートにも観に行ったりしました。それまでどちらかといえばHR/HM系統のサウンドを好んで聴いていた僕にとっては、どことなく乾いた音遣いのする大人のロックに刺激を受けました。歳も一つしか違わないのに、なぜこんな大きな世界観を持っているのだろう。
そして宮原さんの魅力は、骨太なのにハイトーンの抜けがいいボーカリストとしてもさることながら、ギタリストとしてのテクニックも一流なのですね。普通にそこらのスタジオミュージシャンよりもギターが上手くて味がある、ギターでも「歌える」「泣ける」のです。そんな宮原学というミュージシャンの存在に衝撃を覚えた20歳の瞬間。よし、僕も頑張ろう。そんな風に思ってバンドに明け暮れたことを思い出します。
それから宮原さんはソロ活動を経てバンドも結成するなど活躍した後、ギタリストとして数々のアーティストのサポートも務めます。その後、しばらくその活動が見られませんでしたが数年前から再びソロ活動を始めました。そんな宮原さんの復活を喜んでいた時に、奇遇にも数年前にSNSサイトで出逢うことが出来て、メッセージをやりとりさせて頂くようになりました。その後、宮原さんがtwitterを始めたことでさらに密なコミュニケーションを深めるようになりました。インターネットというかtwitterの距離感やスピードに驚くと共に、人の出逢いの面白さというか不思議なご縁に感謝しました。
そんな宮原さんの25周年ライブが12日に渋谷の「O-WEST」で行われると聞けば、それはいても立っても居られなくなるというもの。仕事のスケジュールを何とかやり繰りして陣中見舞いに渋谷まで出掛けました。井の頭線沿線に住んでいた僕にとって、渋谷は幼い頃の想い出が詰まった街。駅の周辺は随分と綺麗になりましたが、道玄坂から百軒店の雑然とした雰囲気は変わりません。
久々に観た宮原さんのライブはとても素晴らしいものでした。これまでのヒットナンバーも熟成された深みがあり、今月24日に発売となるニューアルバム「The Double Clash!」からのナンバーも大人の渋さがありました。そして、これほどまでにパワフルで熱く、笑顔に溢れた楽しいライブは久しく観たことがありませんでした。ドラムの小田原豊さんやギターの葉山たけしさん、キーボードの潮崎裕己さんなど錚々たる顔ぶれ。メンバー同士時折目で合図しながら、全体の音を作り上げている空間。皆が宮原さんを音と笑顔で支えているステージは素晴らしかった。そして客席のお客さんも皆さん笑顔。音楽とは本来「音を楽しむ」もの。笑顔がいっぱいのこの日のステージは、そんな音楽の基本に立ったライブだったように思います。
光栄にも終わった後の打ち上げに参加させていただきましたが、バンドの皆さんもスタッフの皆さんも実に温かい人たちばかりで、とても楽しい時間を過ごすことが出来ました。そして色々気遣い下さった宮原さんも温かく接してくれました。学生時代に衝撃を受けた最高のボーカリストと酒を酌み交わしながら、熱く語り合った夜。25年経っても変わらぬパワフルな姿を見せてくれた同世代の彼を目の前にして、図らずも僕は20数年振りに再び衝撃を受けてしまったのです。
よし、僕も頑張ろう。彼に負けないように、僕も頑張っていこう。今回宮原さんと出逢ってライブに参加する中で、そんな思いを新たにすることが出来ました。20年振りの再会に感謝。偶然のような必然の出逢いに感謝。そしてそんな新たな出逢いの始まりに感謝。宮原さん、素敵な夜をどうもありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いします!
(追記)そんなわけで、宮原学デビュー25周年を記念した新譜「The Double Clash!」がいよいよリリースされます。男たるもの軟弱な音楽を聴いている場合ではないのだ。これこそ大人の男が聴くロックだ。
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