ぎをん小森@祇園
祇園白川界隈はいつも人が行き交う人気の場所ですが、春になれば桜の名所としてより多くの観光客で賑わいを見せます。そんな春の昼下がりにふと足を運べば、古い町家が建ち並ぶ川沿いに咲く染井吉野も散り始め、白川の流れゆく川面に桜の花びらが浮いているその中に、凛として立つ一羽の蒼鷺がおりました。京都を素通りする僕ら観光客からすれば実に風情ある光景ですが、京都では蒼鷺による鯉の稚魚への被害などが問題となっているようで、あちらを立てればこちらは立たず、なかなか上手くはいかぬものです。
そんな祇園白川新橋のたもと、柳の木の下に建つ一軒の町家を使ったお気に入りの甘味処が「ぎをん小森」です。京都の甘味処と言えば誰もが同じ祇園にある「茶寮都路里」を思い浮かべるかと思います。僕も大好きなお店ではありますが、ビルの2階にある都路里よりもより京都らしさを味わえるという部分で、僕はこちらの小森の方に足を運ぶことが多いように思います。とはいえ、よくこの二軒は連続してパフェのはしごをしたりするのですが。都路里はその気になれば京都市内の他の店でも、あるいは都内でも味わうことが出来ますが、小森はこちらにしかありませんので京都にいる時には必ず伺います。
かつてのお茶屋さんだった古い町家を改装したお店は実に風情があり、よく京都のガイドブックやイメージカットでも撮影に使われるほど。入口で履物を脱いで照明を落とされ行灯が置かれた廊下を歩いて部屋に通されます。窓からは簾越しの白川を眺めることが出来、川のせせらぎを聴きながら美味しい甘味を堪能することが出来ます。僕が通い始めた頃はまだあまり知られていなかったでしょうか、週末でもあまり待たずともすっと入れたものでしたが、ここ最近になって急に長い行列などが出来るようになりました。とは言えやはり都路里の行列は半端なく長く、しかも無機質なビルの階段で待たされるのに比べて、こちらは白川のほとりで川を眺めたり、時折行き交う舞妓さんの姿を見たりしながら待っていられますので、観光客、特に外国人観光客に人気なのもうなずけます。また、一軒まるまるお店ですのでキャパシティも百名程は入るとのことですので、比較的回転も早くお店に入ることが出来ます。
本わらびを使ったわらび餅にぜんざい、あんみつ、ところてんと和甘味が数多く並ぶお店ですが、こちらでいつもいただくのはパフェ。その中でも「小森抹茶ババロアパフェ(写真)」(1,400円)がお気に入りです。過日某テレビ番組にてタレントの安倍なつみさんもお気に入りと言っていました。抹茶アイスとバニラアイスを核に、抹茶ババロアに抹茶カステラ、さらには小倉餡と白玉、栗などがたっぷりと入っています。こちらのパフェはそれぞれの具材が強い存在感を持つ都路里のパフェとは違って、一つ一つのパーツが実におとなしい味わいで、単体では正直若干の物足りなさを覚えるほどなのです。しかし、一度食べ始めていくとそれぞれの個性が見事に調和して、パフェ全体としての一体感があるのです。例えるならば都路里の「特選都路里パフェ」が各チームの4番打者を揃えた平成のジャイアンツならば、小森の「小森抹茶ババロアパフェ」はそれぞれのエキスパートが自分の役割を弁えていた昭和のV9ジャイアンツとでも言いましょうか。
見た目かなりのボリュームがありますが、甘さ控えめなのでするっと食べられてしまいます。価格は正直若干割高かなと思わなくもありませんが、古き良きお茶屋さんの風情を残す町家の場所代と思えば妥当なところでしょうか。ゆったりのんびり、旅の疲れを癒す一時が味わえる佳店です。
■甘味:ぎをん小森
京都府京都市東山区祇園新橋元吉町61
075-561-0504
11:00〜20:30
11:00〜19:30(日曜)
水曜定休
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