河原成美 四季のラーメン 第15作「GENKAI TAICHA 2009」
博多一風堂の店主、河原成美さんの創作ラーメンイベント「河原成美 四季のラーメン」に行って来ました。2001年に始まった一日限りのラーメンイベントも今回で15回目。以前は博多で行われていましたが、昨年より場所を東京・銀座にある「銀座五行」へと移して行われています。博多時代は残念ながら足を運べずにおりましたが、東京に来てからは毎回お邪魔して美味しいラーメンを楽しませていただいています。夕方5時から夜8時までで200食限定。毎回大盛況のイベントですので、この日も事前にしっかりと予約をして出かけました。開始当初から長蛇の列が出来ているという話でしたが、僕がお店に着いたのは午後7時半近くで、さすがに外の行列は10名程度にまで短くなっていました。
行列に並んでいる間は顔見知りの力の源のスタッフの皆さんと談笑。そして店の前に出て来た河原さんにもご挨拶。心なしか今日はいつもに増して気合いが感じられます。程なくして店内に入ると宮崎さんや吉崎さんなどが忙しそうに動き回っています。彼らのような一風堂の店長クラスの人達が一同に会して回すオペレーションも見ていてとても気持ちがいいです。席に通されると宮崎さんが来て、麺の粉の比率や試作段階での苦労など、今日のメニューについての裏話などを色々と話して下さいます。
期待の高まる中、いよいよラーメンが登場です。と言ってもお盆の上に小皿がいくつも並んだビジュアルは、ラーメンというよりもまるで和食膳のような出で立ち。今回の作品のタイトルは「GENKAI TAICHA 2009(写真上)」(1,500円)。2009とあるように、実は今回のラーメンは2007年の秋に四季のラーメン第10作として提供された「GENKAI TAICHA」のリメイクバージョンです。前回の時は博多でのイベントで食べることが出来ませんでしたので、念願かなったりというところです。
まず小さな小鉢達の中身は、玄海産鯛刺身の胡麻和えに、炭火で燻した沖縄産長寿豚のチャーシュー、有明産海苔、京都産漬け物、玉子焼き、あられにセリやミョウガなどの付け合わせ。これは単品でつまんでも良し、ラーメンに入れても良し、あるいは茶漬けの具として使っても良し。食べる側の自由に委ねられています。ラーメンはなんだかんだ言っても他の料理と較べて絶対的に色が少ないわけですが、この器の中にある具材たちは実に華やかで食卓を彩っています。
そしてラーメンですが、透明感のあるスープに茶蕎麦のような麺がたたずみ、そこに玄海産鯛の燻製と山椒の葉、柚子片が浮いています。清廉で凛とした表情の丼からは鯛の燻した香り、そしてスープの優しいうま味の香り。丸みのある塩味が地鶏と豚骨のうま味を上品にまとめあげ、そこに嬉野茶と米粉を混ぜた風味ある麺が絡みます。このラーメンをそのまま食べても十分美味しいのですが、先ほどの小鉢の具材を入れながら、味の変化を楽しむのも一興。
締めには追い出汁と呼ばれる鶏とお茶が合わせられた優しい味わいのスープを。この追い出汁を俵むすびに入れてお茶漬けにして味わいます。無論ラーメンのスープも少し入れてみたりして、ここでも色々と自分好みの味が作れます。また、ラーメンの丼にもこの追い出汁を入れるとスープ割りのように味の変化が楽しめます。
これでもか、という程にサービス精神旺盛の一杯は、1,500円という価格では正直申し訳ない程の楽しさです。ハレとケで言えば当然ハレのラーメンではありますが、得てしてイベントラーメンはどことなく作り手のエゴが滲み出たりするものですが、この一杯は独りよがりになっておらず、完全に客の立場に立っている一杯になっているのです。盆の上に乗っているすべてのものに意味がある。無駄なものが一切ないのが素晴らしいです。最後の最後まで飽きさせることなく食べさせるという強い意志が随所に感じられます。そこがエンターテイナー河原成美の真骨頂というところでしょう。
伺った時間も遅かったのでもうイベントも終盤、時折キッチンからホールに出て来ては河原さんが一つ一つのテーブルに寄って声を掛けています。そして僕らの食事が終わった頃、河原さんがテーブルにやって来て下さいました。ちょうど杯数も終了したタイミングでしたので、河原さんも一段落したのでしょう、ゆっくりと腰掛けてニューヨークのことや一風堂の今後など、色々なお話をして下さいました。もう河原さんとはかれこれ十年近いお付き合いになりますが、いつお会いしても変わらぬ若さとバイタリティで、常に元気が貰えるような気がします。こういうオヤジになりたいなと思う数少ない存在の人です。そしてこういうオヤジになる為に、僕ももっと頑張らなければと思うのです。
■ラーメン:銀座五行
東京都中央区銀座2-4-6銀座Velvia館7F
03-5524-0002
月〜水 11:30〜16:00(15:30LO)17:00〜24:00(23:00LO)
木金 11:30〜16:00(15:30LO)17:00〜翌3:00(翌2:00LO)
日祝 11:30〜16:00(15:30LO)17:00〜22:30(22:00LO)
無休
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