箱根茶寮椿山荘@小涌谷
小涌谷温泉と言えば温泉ホテルや温泉施設などが揃う「箱根小涌園」が有名ではないかと思いますが、この小涌園を運営しているのが「椿山荘」などでも知られる「藤田観光」という会社です。その会社のルーツとも言えるのが小涌園ですが、その小涌園敷地内ユネッサン散策ゾーンにて、小涌園創業当初の建物を使用している日本蕎麦店がこの「箱根茶寮椿山荘」です。ここは元々藤田家の別邸として大正時代に建てられた立派な庭園を持つ日本家屋で国登録有形文化財建造物。現在は「貴賓館」という名前がつけられて、小涌園一帯を見下ろす丘の上に山王神社という小さな神社と一緒にあります。
入口で靴を脱いで大正時代の香りが残る建物の中へ。庭が見える広間をはじめすべての客席は背凭れの高い椅子とテーブルの席になっています。一瞬ミスマッチとも思える純和風建築の空間に並ぶテーブルの光景が逆に大正ロマンを彷彿とさせます。蕎麦は単品がなく、どのお蕎麦も先付けと甘味が付いて来ます。基本の蕎麦は「冷蕎麦」(1,800円)ですが、こちらのお店では天城産軍鶏を使った一品も人気ですので、軍鶏スープや軍鶏の炒め煮などが組み込まれた「特選会席大文字膳」(3,800円)をお薦めします。
コースとしては「先付け」「天城産軍鶏のスープ蕎麦の実仕立て」「山の幸のお造り三種盛」「天城産軍鶏の炒め煮」「箱根汲み豆腐サラダ」「筍の土佐煮と菜の花」「冷蕎麦(写真)」「甘味」となります。これだけ出てきて3,800円というのはなかなかのコストパフォーマンスではないでしょうか。肝心のお蕎麦ですが、まずその艶やかで美しい表情に魅せられます。こちらのお蕎麦は北海道北竜町の蕎麦を使用しているそうですが、盛りは結構多めでしっかりと水で締められた食感の良いお蕎麦です。割合としては確認しませんでしたが、二八ではないでしょうか。また星はほとんど見えません。そばつゆは醤油の強い辛めのつゆで香りが良いです。なお、こちらのお蕎麦には薬味と共に生山葵が一本ついてくるのも嬉しいです。安土桃山時代の陶工にして楽焼の祖としても名高い長次郎作の鮫皮おろしと共に供される山葵を、円を描くようにおろして蕎麦につけてすすります。山葵と蕎麦の香りが鼻腔を抜けて至福の時に包まれます。
またこちらでもう一つお薦めしたいのが「箱根山天ざる」(2,000円)です。こちらは「よもぎ蕎麦(写真)」「野菜天」が一緒になった一品。この野菜天はその季節の旬の野菜を使っており、今の時期では春野菜で箱根の山で採れた山菜や筍などがたっぷり入っていました。天つゆは付いて来ずに塩でいただきますが、どの素材も旬の味がしっかりと出ていますので塩すらも要らないくらいでした。お蕎麦はよもぎがたっぷりと練り込まれていて、よもぎ独特の風味が香る山を感じさせるお蕎麦です。食感は田舎蕎麦のような食感とでも言いましょうか、食感に多少クセがありますが喉越しも良くなかなか後を引くお蕎麦です。箱根の暖かな春の日差しの中で、窓から見える庭園を眺めながら、春の息吹が感じられる天婦羅と一緒に味わうとまた格別です。温泉とセットでぜひ行ってみて下さい。
■蕎麦:箱根茶寮椿山荘
神奈川県足柄下郡箱根町二ノ平1297
0460-82-8050
11:00〜18:00(LO17:30)
無休
Recent Comments