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Thursday, 05 May 2011

僕が激安焼肉店に行かない理由

Yakiniku肉店「焼肉酒家えびす」における集団食中毒事件。まずはお亡くなりになられた方に心から哀悼の意を表しますと共に、今後このような痛ましい事件、事故が起こらないことを心より願っています。

 現段階で分かっていることは、富山や福井、神奈川など上記チェーン各店において、死亡した方たちを含めて被害者が感染したのはいずれも「病原性大腸菌O111」であるということ。またその遺伝子型が同一であるということ。原因菌及び遺伝子型が同じということは、同じ牛であるか、そうでなければ同じ施設で同じ器具などを使って処理しているとしか考えられないわけで、そうなると店舗や運営会社の衛生管理基準やオペレーションに問題があるにしても、この会社のセントラルキッチンもしくは肉卸業者における一次加工の段階に問題があると推察出来ます。

 この会社は高品質でありながらも価格が激安である焼肉店として急激に業績を伸ばしていく過程で、2009年より安い食材を求めて今回の肉卸業者に変更したのだと言います。店舗展開が急ピッチになる時には、オペレーションの見直しや業者の変更が行われることは常ですが、その結果衛生管理体制が甘くなったり、ダメな業者に変わってしまったのかも知れません。もし肉卸業者からセントラルキッチンに納品されてそこで加工されているならば、そのキッチンと肉卸業者のどちらかに問題があるでしょうし、肉卸業者で一次加工がされて直接各店舗に納品されているのであれば、卸業者の責任がまず問われそうです。いずれにせよこれだけ同時に複数の場所で、かつ子供だけではなく大人まで多くの方が被害にあっているということは、そのいずれかに相当な瑕疵、欠陥があったと考えて良いでしょう。

 今回の事件は論点がいくつかあるので整理が必要です。まずは「生食用牛肉の衛生基準問題」について。新聞はじめマスコミ各社が「生食用を使わなかった」と一斉に報じましたが、飲食業界の立場からすれば「今さら何を言ってるの」というのが正直な感想でしょう。フーズ・フォーラス社の勘坂康弘社長の会見と、その後の報道で明らかにされたように、現状として国の衛生基準を満たす「生食用」の牛肉の国内出荷の実績はほとんどありません。これは今明るみになったことではなく、以前から食の業界に携わる人間ならば誰もが知っていることですし、一般消費者に向けても行政はアナウンスしてきています。例えば都の福祉保険局が配布しているリーフレットにも、「市販されている肉の大部分は加熱調理用」であることや「肉を生や半生の状態で食べることは避け、中の色が完全に変わるまで充分に加熱する(加熱目安:中心部温度75℃で1分以上)という指針がしっかりと書かれています。

 つまり「全ての焼肉店で出されている生肉は生食用ではない」「生で肉を食べるのは食中毒のリスクがある」ということは、今回の事件以前から分かっていたことなのです。焼肉店での「ユッケ」などは、加熱用の牛肉を各店独自の衛生基準に基づき安全対策をした上で生食で提供しているのです。要するに生食用肉の衛生基準問題については、消費者のニーズや市場の現状と著しく乖離している、あるいは衛生基準に現状が合致していないということになります。なので「生食用を使わなかった」とこの会社を責めるのは間違いと言って良いでしょう。

 しかし、すべての焼肉店が同じルールに乗っ取って営業しているにも関わらず、これまでこのような問題が同時多発した例はあまり見当たらない。となると今回の食中毒の原因はどこにあるかと言えば、やはりこの会社独自の衛生管理基準やオペレーションの問題か、肉卸業者にあると言えそうです。前述したフーズ・フォーラス社社長の会見の論点も、まさに今述べた2点に集約されています。つまり「生食用ではない肉を使ったことを責められるならば、国の衛生管理基準が間違っているのですべてのユッケを販売禁止すべき」「今回の問題は生食用の肉を使わなかったことではなく、当社もしくは肉卸業者の衛生管理自体に問題があることを認めお詫びする」という内容でした。

 この社長の会見の論旨や論点そのものはまったく間違っておらず、文字だけを見れば至極真っ当なことを言っているのですが、実際に映像でその様子を見るとまったく印象が異なります。やはり生というか映像の持つ力は凄いですね。ああいう会見には向かないオーバーリアクションと喋り方。そして半ばキレ気味で話をして最後は捨て台詞を吐いて席を立っていく。上記のような業界の背景において、生食用を使わなかったと責められるのは筋違いというのは正論ですし、そこについて文句を言われて腹が立つのも分かる。しかし原因がどこかという以前に、自分の店で死者を4名も出している、そのことについての謝罪会見であるということがまったく分かっていない。

 不謹慎かも知れませんが、会社として最悪の状況において、彼の立ち回り一つでもしかしたら会社の信用が若干は戻ったかも知れないですし、被害者感情も若干は救われたかもしれない。しかしあの会見でさらに信用は堕ち、被害者の神経を逆撫でしてしまいました。食の安全を遵守しなければならない責任があり、従業員の生活を守らなければならない立場。それなのに冷静さに欠き、それらの責任や立場を忘れているかのような会見でした。状況判断能力と危機管理能力の足りない経営者と言って良いでしょう。

 動画投稿サイトにアップされた映像でこの店の調理手順を見ましたが、これはちょっと問題ですね。これでよく今まで事故を起こさずにやって来たものです。この店の厨房には肉を扱うプロや、しっかりと教育を受けた人がいないことがわかります。僕が知っている焼肉店などは、この店よりも衛生基準のレベルが高かったり、オペレーションがしっかりしていたり、経験や調理技術に長けている人が厨房にいます。ただ、手順はさておき厨房自体は清潔で整理整頓されていましたし、それなりに衛生的であったこの店でこのような事故が起きたということは、他の店でも起こらないとは言い切れないようにも感じます。

 やはりまず焼肉一皿100円などという価格設定の店にはどこかで無理があると思うのです。物には適正価格というものがあって、それ以下で出されているものには何かしらの理由があるはず。もちろん「企業努力」によって価格を押さえている例も多々あるでしょうが、その企業努力=コスト削減が果たして大量仕入れによるものなのか、人件費削減なのか、安い材料や粗悪な卸業者を選んだものなのか。色々な「努力」があるわけですからそれを見極める注意が必要だと思うのです。「安かろう悪かろう」という言葉がありますが、100円均一の文房具が壊れたとか、ハンカチの色落ちがしたなんてのは笑えますが、命に繋がる食の安全性についてはもっと敏感にならなければいけません。

 かつては「安かろう悪かろう」だから避ける、という感覚がありましたが、長い不景気によって最近は安さ最優先の意識が広がってしまって「安いのだから質が悪くても仕方ない」という感覚が蔓延っています。200円台のお弁当や丼もの、ラーメンなどが売られている今の世の中ですが、この「安さ最優先主義」は食に関しては非常に危険です。よりその影響を受けやすい子供達に食べさせる食べ物であればなおのこと。

 私たち消費者は食べ物についての知識をもっと持たなければならないと思います。今回被害を受けたうち子供が何人もいましたが、弱者である子供が被害に逢うのは当然であると思うと同時にちょっと驚いた部分もありました。これは誤解があってはとても困るのですが、食べた側にはまったく罪はなく、すべてはこの店が責められるべきという大前提に立った上で敢えて言わせて頂くならば、なぜこの親は子供にユッケなどを食べさせているのかなと。僕だったら子供にユッケは絶対に食べさせないし、レバ刺しや鶏刺しも絶対に食べさせません。それは激安店だからではなく、超高級店だとしても同じことです。なぜならそもそも「肉の生食」にはカンピロバクターだとかO157のような食中毒の原因菌を摂取する可能性が多分にあるからです。現に15年程以上前、牛のレバ刺しによって多くの食中毒を出したことから、現在の厚労省の衛生基準が設けられたわけですし。

 僕が子供の頃には、ユッケやレバ刺しなどの肉の生食はもちろん食べさせられませんでしたし、特に豚肉については病原菌や寄生虫などがいるからしっかり加熱するように教育が徹底されていました。鯖なども当たりやすい魚として注意するように言われましたね。なので今でもユッケやレバ刺しを食べる時には多少の緊張感を持っていますし、しゃぶしゃぶなどでも牛より豚は徹底的に湯がくのが習慣づいています。あとは鮭なんかもアニサキスなどの寄生虫がいるのでルイベで食べるのが基本ですし、秋刀魚や鯖なども同じく寄生虫がいる魚ですので、刺身は避けるのが普通でしょう(ちなみに酢で締めても寄生虫は死なないそうですが)。生牡蠣をはじめ貝類の生での全食もかなり食中毒の危険度が高いので注意が必要です。

 従ってこれらの物を生で食べる時には、まず信用のおける店や食材を選ぶということと、自分自身の体調もしっかり見ておかなければならないし、特に抵抗が弱い子供やお年寄りに対しては慎重にすべきなのです。これらのことは一般常識だと思っていたのですが、この一連の騒ぎを見るとどうやらそこらへんの常識や知識を知らない方も多くなっているようです。これは牛乳やホウレンソウの放射能で死に至る可能性よりも遥かに危険な事態だと思います。

 そして、そのように危険度の高い生肉の摂取をして食中毒になる場合、高級店よりも激安店で起こるのも可能性としては非常に高いですし、大人ではなく子供に多く発症するのも確率的には当然なわけです。だから僕ならこういう店にはまず行かないし、仮に行ったとしても生肉は食べないし、仮に食べたとしても子供には食べさせない。今回の事件の場合、原因の一つに安全のため食材の肉の表面を削ぎ落とす「トリミング」という工程を省略していたと報道されています。削ぎ落とすということはそれだけ捨てる肉が増えるということで歩留まりが減るわけで、それは無駄であるしもったいない、という発想になるのは間違ったコスト削減の考え方なわけですが、激安店の命題は「とにかく安く」なわけですから、そういうことになるのは当然とも言えます。飲食店における正しいコスト管理、コスト削減のルールとしては、まず食の安全性とそれを守るための衛生面が担保されているかどうかが第一です。というよりもそこが全てなのかも知れません。

 もちろん全ての飲食店、料理で衛生面は徹底して頂かなければ困りますが、提供する料理の内容によって基準やレベルに違いがあります。乱暴な言い方をすれば、ラーメン店や中華料理店なんてのはそこらへんの認識が若干甘くても、使用する食材の大半が加工物であったり、ほとんどすべての物が加熱して出されている為、食中毒を起こす確率としては焼肉店などに比べたら遥かに低い。もちろん生肉を切った包丁やまな板でネギなどを切るなんてのは問題ですが、注意しなければならないチェックポイントが少ない、つまり危険性が低いと言えます。

 しかし生の素材をメインで扱う飲食店、例えば焼肉店や和食店、イタリアンなどの場合は、同じ基準でやられると非常に危険なわけです。だから僕は決して気取っているわけではなく、こういうジャンルの激安店には原則として行きませんし、行った場合も生肉や非加熱の料理は極力避けます。ナショナルチェーンのファミレスや居酒屋、回転寿司などはかなり精査されて、衛生管理面が非常に厳しくなっている業界なので安心は出来るとは思いますが、やはりそもそも「当たりやすい食材」ってものはどこがどう扱おうが当たる時は当たるわけですから、どんな店であっても極力それを避けるというのが賢明でしょう。命を懸けてまで食べるべきものなど世の中には一つもありません。

 僕がこういう店に行かないもう一つの理由。それは焼肉や寿司などは良質のものを食べたいと思うからです。食べ物にも「ハレ」と「ケ」ってあると思うのですよね。僕の感覚としては「焼肉」も「寿司」も「ハレ」の食べ物。牛丼とか立ち食い蕎麦、ラーメンのように、毎日とか毎週食べるものではなく、何か特別な時に食べる食べ物。そんな滅多に食べないスペシャルな食べ物だからこそ、激安店なんかではなく良いものを美味しく食べたいと思うのです。せっかく焼肉を食べに行くなら、激安店に2回行くところを我慢して適正価格の焼肉店に1回行く方が、遥かに満足度も高く美味しく楽しめると思うのですが。ハレの外食に求められるものは、ある種の「非日常」であり「特別感」。ドキドキワクワクする楽しさや緊張感など。素晴らしい技術、料理、接客、空間など。激安店にそれを感じることは残念ながらありません。

 何でもいいから取り敢えず腹一杯喰えればいい、という価値観を否定はしませんが、その価値観に焼肉や寿司という料理は当てはまらないと思うのです。ましてや子連れなら食育や躾の観点からも、もっと良質の店に連れていくべきではないかなと。しっかりとした接客や美味しい料理を子供の頃に経験しておくことは、人格形成においてとても大事なことです。また、コストを考えるならば、近所の肉屋さんに行っていい肉を買って、家で焼肉をやった方がよほど安くて量も食べられて美味しく楽しい食事になります。寿司だったら手巻き寿司なんてのも楽しいですよね。焼肉や寿司にはCP最優先の発想は合いません。そこでお金がかかると言うなら家で食べた方がCPも良いし楽しくなると思います。なので、何をどうひっくり返しても激安焼肉店に行く理由が僕には見つからないのです。

 今回の事件を受けて思ったことを、とりとめもなくtwitterでつぶやいたのですが、今回それを加筆修正した上でまとめてみました。まとめたはずが余計まとまらず、5000文字を超える文章量になってしまい反省しております。まとまらないついでに更なる追記をするならば、この問題は家庭の台所でも起きる可能性があるということを忘れてはいけません。包丁、まな板などを生肉と野菜でしっかり分けたり、きちんと消毒などをしているかどうか。菌などが死滅するまでの加熱を徹底しているかなど、チェックポイントは多々あります。そしてそういう情報もちゃんと厚生労働省から指針が出されています。どうかご家庭でもこの点についてあらためてご確認頂きたいと思います。

 あらためて思うに、国の衛生基準の問題、店の衛生管理方法、食べる側の知識など、今回の事件から考えるべき問題は非常に多いです。今回の経験を活かしてすべてのことが改善されて、今後このような痛ましい事件が起きないことを切に願います。(写真は本文とは一切関係ありません)

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Wednesday, 04 May 2011

ちばとぴ千葉日報ウェブ(5/4掲載)

1105_clover在公開中のWEB「ちばとぴ千葉日報ウェブ」文化ページにて、僕が取材、撮影、執筆を手掛ける千葉日報の連載「千葉ラーメンの達人たち」の第25回目が掲載されています。今回は昨年9月、成田にオープンした「らあめんclover」をご紹介。東京の人気店「斑鳩」で経験を積んだ若きご主人が、地元千葉県の食材や調味料を使って地元に密着した一杯を作っていらっしゃいます。新店とは思えない完成度の一杯で、初めてお店に行った時には思わず2杯続けて食べてしまったほど。

 このウェブコンテンツは新聞「千葉日報」紙上の連載の再掲になります。千葉日報の連載同様、こちらのウェブ連載の方もよろしくお願いいたします。

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